「介護現場インタビュー」100歳の母の介護

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~ 数々の苦難を乗り越え「普段通りの幸せ」が今、我が家に ~

取材日: 2015-11-07(土)

100歳の母の介護

清潔にするだけで、母が元気になる

沖縄市で暮らす普久原さん親子に、元気の秘訣を取材しました。
お母様のツル子さんは、なんと今年“数え歳”で100歳。
その母を支える息子の朝栄さん(67歳)は、一般的に高齢者と言われる年齢です。

元気を維持する秘訣は意外なことでした。
午後4時過ぎにデイケアからの送迎バスでツル子さんが帰ってくると、毎日必ず行うある事があります。

送迎バスから降りた車いすに乗る母と軽く会話を交わすと、玄関近くの敷かれた水はけの良いマットの上に移動します。

100歳の母の介護

手際よく車いすの車輪や足踏み台、ツル子さんの靴裏などをホースで水かけしながら濡れタオルでゴシゴシと丁寧に隅々まで拭き取ります。
なぜ、ここまでキレイに拭き取るのか朝栄さんに尋ねると
「当たり前のことをしているだけだよ。清潔にするだけで、母が元気になる。子供のようにね。」

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車いすの掃除を終えた朝栄さんは、ツル子さんを玄関先から自宅内に移動します。
お湯で濡らした温かいタオルでツル子さんの手や顔を丁寧に拭いていきます。続けて洗面器を用意してうがいもしっかりと行います。
その時、ツル子さんが口を大きく開け舌を出したのです。長栄さんは舌をそうじする専用スポンジで舌の表面に付着した汚れを拭き取ります。
その姿は、口腔ケアが医学的に重要であることを熟知している医療者のようでした。

これまでに朝栄さんは医療や介護とは無縁の建築・土木関連の仕事をしていたと聞いていいたので、取材陣一同とても驚きました。

老人ホームに預けていた6年間は戦いだった。

一段落した朝栄さんは、私たちが質問した「車いすをキレイに洗うことや、母が元気になったこと」について、少しずつ話し始めました。

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「6年間、3箇所の老人ホームを転々とした。母が入居する老人ホームに朝昼夜と何度も訪れ、様子を見に行き、必要な世話をしていた。」

当時入居していた老人ホームでは、入所者の手が真っ黒に汚れたまま食事をしていることが多く、また時には流しにも残飯が残ったままで、施設の衛生環境は良くなかったようです。
「食事の際、汚れた手に殺菌・消毒のためのスプレーを吹きかけていたが、汚れたままの手ではあまり意味がない。」
全ての老人ホームがこのような対応をしているとは思わないが、耳の痛い話である。

つまり、朝栄さんが伝えたかったことは、「消毒より、水で拭く、洗う。手がキレイで清潔。当たり前のことをしているだけで、よみがえる。元気になる、子供のように。」ということなのだ。

今では、しっかり車いすに腰をおろし、まっすぐ座っているツル子さんだが、老人ホームにいたころは、車いすに座っているときも自分の体を支えきれず横に傾くなど、だいぶ体が弱っていたそうです。

「普段通りの幸せ」を求め。老人ホームから我が家で介護をスタート。

母を老人ホームから自宅に呼び戻し、親子二人三脚の介護生活がスタートした。

100歳の母の介護

「介護は本当に大変。隠れたもの。見えないことがある。めった打ちにされた。」
真夜中の2時でも母の介護で度々起きる必要があり、睡眠不足や、時には朝まで眠れないなど、他にも人には話せない沢山の出来事、苦労があったという。

山ほどあった説明できない苦労や出来事も、ひとつひとつ創意工夫しながら改善していったことで介護を自然にできるようになったそうです。
「失敗しても必ず他の方法、他の道があると信じて、これまで母の介護を続けてきた。」
キレイ事だけではない、生々しい自宅での介護生活の一部を話してもらえました。

「薬局」に期待していること。求めていること。

普久原さん親子が在宅医療を行うきっかけとなったのは、薬局での何気ない会話からでした。

「在宅医療を検討してみませんか。」

ミドリ薬局から訪問診療を行うクリニックへ打診し、担当ケアマネージャーとも話し合いを重ねました。そして、これまでの親子二人だけの介護生活から、医療・介護専門家を加えたチームで介護を支える「在宅医療」がスタートしたのです。

現在では、ミドリ薬局の薬剤師が訪問診療の医師と共に薬物治療の内容を検討し、処方薬を調剤して定期的に自宅まで届け、無理なく飲めるように支援することや、介護用品の選定・配達を行ったりしています。

「合理的で便利なところが良い。そういったところで支えて欲しい。」
朝栄さんが、薬局へ期待していることそういうことのようだ。

「母には長く元気に生きてほしい。だから私も健康でなければね。」
これが私の健康の秘訣だよと、イスに座り、ちょっと変わった格好で、後ろに思い切りのけぞり背伸びしてみせた。

介護現場は「きつい、汚い、臭い」とよく言われる。
その中で、100歳の母と67歳の息子が互いに向き合い、身体を清潔に、部屋をキレイに、人として当たり前の生活を送っている。

「当たり前のことをしているだけで、よみがえる。元気になる、子供のように。」

取材中、ひっきりなしに沖縄民謡を口ずさみながら「むぅ~れ(踊れ)、むぅ〜れ」と両手を高々と上げて、カチャーシーを踊る真似をする元気なツル子さんの姿から、生活の中の介護とは何なのか、大きな学びと元気をもらいました。

100歳の母の介護

取材協力:有限会社オービック様(打ち合わせの様子)

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